病院病棟における患者様との関わり方(トラブル対応とコミュニケーション方法)

382

病院には様々な症状をお持ちの患者様が入院され、それに応じて必要な対応も異なってきます。

ここでは、私が病院勤務時代に担当させて頂いた患者様の事例を交えて、コミュニケーションを上手に取り対応した話をご紹介します。

 

患者様の性格とそれに応じた対応方法

私が以前働いていた病院の病棟には、男女共に半々くらいの患者様がいて、病室も分けられていました。

患者様は大体1ヶ月以上は入院される方が多く、入院生活に順調に慣れていくか、ストレスになるのかのどちらかでした。

 

女性の患者様同士は仲良くなることも多く、お互いに疾患の管理について情報提供をする姿も多く見受けられました。

私も女性の患者様とは、仲良くなることが多く、

「明日は何勤?」

「貴方が担当なら良いな」

と、言われると嬉しくなり、仕事に行くのも楽しみになりました。

 

しかし、病院には神経質な患者様もたくさんいらっしゃいます。

例えば、大部屋の場合、鼾の苦情がとても多いのです。

「病気で入院しているのに、同室者の鼾がうるさくて眠れなかった」

「治療にならないので退院させてくれ」

と言う人もいます。

その場合は、鼾をかく患者様を傷付けないように、夜だけ別室に案内して、お互い不快の無いように工夫をすることがあります。

一つの言葉かけでも、患者様を傷付けてしまったり、怒らせてしまったりすることもあるので、言葉かけは慎重に行います。

疾患を抱えて、不安が多く、入院へのストレスもあるため、患者様の気持ちをよく理解した上で接していく必要があります。

 

看護師として、患者様への言葉かけやコミュニケーションは、とても難しいものだと気が付かされました。

しかし、気が付いた上で患者様と関わっていくことは、決して苦ではありません

私は、どちらかと言うと、少し気難しい患者様でも、理解していただくために、言葉をかけ続けることは好きでした。

少し変わっているかもしれませんが。患者様は、いつしか心を開いてくれて、安心して治療に専念してくれる人がほとんどでした。

そのため、患者様との関わりは看護師として、一番大切だと思っています。

 

とっさの応用が求められるケース:難聴の患者様の事例

看護師は患者様の症状に応じて、関わり方を調整していくことが大切です。

ここでは、一例として難聴の患者様とのエピソードをご紹介します。

 

難聴の患者様のお話

患者様の症状

80代男性で、長年糖尿病を患っていて、腎機能や肝機能の数値も悪いため、内服薬も多量に飲んでいました。

3ヶ月以上、長期に入院されていました。自宅では、妻が内服薬やインスリンを、ほとんど管理していたとこのこと。

本人は、補聴器は使用しているものの、重度な難聴で耳の近くで何度大きな声で話しても伝わらないことが多く、視力も悪いため紙に大きな文字を書いても読めず、口の動きでやっと分かることが多かったです。

明らかに伝わってないだろうなと思うことも、笑顔でかわされていたこともありました。

後で分かりましたが、実は奥様でも難聴なご主人とのコミュニケーションには苦戦していたそうです。

聞こえない分、本人も大きな声で話すので、病室中に声が響いていました。

時々、歩行にふらつきはありますが、1人で散歩に行ったり、食事や排泄は勿論、洗顔や歯ブラシは自立していました。

インスリン注射も、視力が悪くて数値が見えないため、単位さえ合わせてあげれば、自己注射ができます。

ニコニコといつも笑顔なので、いつしか看護師や医師の間では、人気者になっていました。

 

急遽透析をする際に身振り手振りを介して伝えたエピソード

ある時、腎機能の悪化により、急遽透析をする事になりました。

突然の透析だったためご本人も不安がっている様子でしたが、難聴のためなかなか意図が伝わりませんでした。

それでも私は、何とか身振り手振りで粘り強く伝えていくと、理解・納得して頂けるようになりました

FDLカテーテルを一時的に頸部より挿入し、透析を行っていました。

本人とご家族の同意も取れて、シャントを造ることになりました。透析室へは、週に3回程行き、終わるまでに3~4時間かかります。

透析を始めてからは、膨らんでいた腹部が小さくなり、本人も身軽になったと喜んでいました。

いつしか、顔色も良くなり以前より元気になっていたのです。透析室の看護師からも、いつも笑顔で良いですねと声をかけられるようになっていました。

退院後は、近くの透析室へ通院するということでした。

重度な難聴の患者様と接するのは初めてだったので、コミュニケーションのとり方の難しさを学びました。

 

対応の難しい患者様の事例

病院に勤務していると、対応が難しい患者様と出会うことがよくあります。

私が新人の頃に対応させて頂いた患者様のエピソードをご紹介します。

 

糖尿病で入退院を繰り返されていた患者様

患者様の症状

40代の男性の患者様で、飲酒が止められないため、糖尿病の治療が進まずに入退院を繰り返していました。

糖尿病は、20年程患っていて、インスリン注射も自己にてできますが、自宅ではやったりやらなかったりだったそうです。

何度もナースコールをしてきては、お腹が痛いから薬が飲みたい、食事が食べられないと訴えることが多く、医師に相談してもしばらく様子を観てと言われました。

お腹が痛いと訴える割には6階の病棟から、自分で1階まで降り、病院の外で喫煙はしているようです。

調子が良い時は、食事は全部食べられて、機嫌よく話すのですが、その変動が激しく、病棟の看護師は皆が対応に困っていました。

中でも私へは色々なことを言う傾向が強く、よく怒鳴られていました。

 

辛抱付く付き添った結果認められた

患者様はその後も何かあれば我侭を通そうとするようになり、私は大変困りました。

新人である私は甘く見られていて、それで何でも言ってきているのだろうと思いました。

落ち込みましたが、主任は、

「患者様自身も、貴方だから色々頼みやすいし言いやすいのよ」

と、おっしゃってくれました。

看護師によって患者様の態度が違うことはよくあることらしく、先輩看護師にも、

「きっと厳しく無いから言いやすいんだよ」

と、言われました。

色々と考えましたが、看護する側である以上、厳しく接したり投げ出すこともできません。

私は粘り強く患者様に接し、応対していきました。

 

私が夜勤のある日、その患者様がお腹が痛くて眠れないと何度もコールを鳴らしました。

結局救急外来で深夜にCTを撮ることになり、結果便秘だと言うことが分かりました。

その後も、食事を摂取せずに点滴投与だけで経過し、長期入院になっていました。

歩くとふらふらすると訴えよろけることも多く、その割には相変わらず煙草は吸いに行くと言う行動が見られました。

以前に比べるとかなり元気がなくなってしまいましたが、私にだけはいつもと変わらず話しかけてくれました。

色々と言われましたが、実はそれは寂しさや不安の裏返しで、きちんと応対していた私はこの患者様に認められ、心の支えになれていたのでした

 

その後、医師からもう退院にするとのことで、晴れて退院になりました。

早く退院したいと言ったり、したくないと言ったり矛盾を繰り返していましたが、退院の日は腹痛の訴え無く、血糖コントロールも良く、元気に帰っていったので安心しました。

最後にずっと私の方を見て、笑顔で手を振ってくれました。

 

不穏な患者様の対応について

患者様の中にはそれまで全く意志の疎通に問題がなかったにも関わらず、突然不思議な行動を取るように方がいらっしゃいます(痴呆症ではありません)。

私が体験した事例と、その時にとった対処法をご紹介します。

患者様の症状

呼吸器内科の60代男性の患者様で、点滴治療を主に行っていて、認知的にも問題無く、心配事などはすぐに相談される方でした。

同室者とも仲良くされており、治療も順調に進んでいたのですが、ある時から不思議な言動をとるようになりました。

この患者様は突然帰ると言い出すようになり、病棟の外まで出て行くようになりました。

その患者様は、普段は酪農をしていて、牛が心配で仕方が無い、牛がそこまで来ていると、幻覚が見えるようになったのです。

今は入院中であることを何度も説明し、その場では一瞬納得されたように見えるのですが、すぐ荷物をまとめて病棟の外へ行く行動が繰り返され、他の患者様が帰る準備をしていると教えてくれるようになりました。

 

その言動が続く中、私が夜勤の時がやってきました。

正直、夜中もそのような言動をしたら、どのように対応したら良いだろうと困惑しましたが、不安は的中し、夜中帰ると訴え、医師へ相談して診察してもらいました。

安定剤を投与して様子を見るしかないと言われ、しばらく様子を見ていましたが、全く効果無く、衣類を脱ぎ始めたり点滴を取り外したりしてしまうので、ナースステーションへ簡易ベッドを用意しそこで寝てもらいました。

 

寝たかに見られてもすぐ起きだしては、帰るとの繰り返しで先輩と交互に対応していて、その中で巡視やコール対応もしているので、業務が全く進みません。

何を話しても、聞き入れずに本当に困ってしまいました。

以前は、意思疎通がはかれていたのに、今は言葉がかみ合わず急に怒り出したりするのです。

患者様は一睡もせず、朝の採血の間も他の患者様の病室へ入ったりするので対応していたら、いつもより業務も遅れていました。

初めての症状に私は困惑してしまいましたが、とにかく粘り強く応対を続けました。

また、少しでも状況を緩和するために、昼間に御家族に来てもらうように計らいました。

これで大分落ち着いたようですが、まだ数日この状態は続きました。

ただ、メインの呼吸器内科へ移動してからは、ほぼ正常に戻ったそうです。

(内服していた薬が原因で血中濃度が上がり、このような状態が至ったことが後で分かりました)。

退院時に、その患者様が顔を出してくれて、ほとんど覚えていないけれどだいぶ迷惑をかけたみたいで、申し訳ないと笑顔でおっしゃっていました。

最後は、とても安心した出来事でした。

 

患者様への応対を通じて成長する

看護師をしていると本当に色々な患者様に出会い・叱責され、悩むことがありました。

ただ、誠意を持って粘り強く努めていれば、必ず患者様には受入れられますし、その努力が自分の成長に繋がると感じました。

私はその後は美容クリニックに転職していますが、病棟での勤務はその後の看護師人生の基盤となるかけがえのない経験になったと感じています。